成長期のジュニアテニス選手の身体で起きていること
身長の伸びと練習の考え方
記事は一般的な情報です。診断や治療の代わりではありません。痛みがあるときは、医療機関を受診してください。
この記事のポイント
- 練習もトレーニングもできているのに、伸びない時期がある
- 感覚が変わる理由と、身長・体重を記録する意味
- 休む日は、練習量より先に決める
- オフシーズンは、テニスでやらない動きを入れる
ジュニアの選手の身体は、毎日少しずつ変わっています。
なかでも身長が急に伸びる時期は、同じ練習をしているのに、動きの感覚が変わったり、パフォーマンスが出なくなったりすることがあります。
この記事では、成長期の身体で起きていることと、その時期の練習の考え方を、現場での経験もまじえてお伝えします。
身長が急に伸びる時期とは
身長の伸び方には個人差があります。一番速く伸びる時期を、**PHV(ピーク・ハイト・ベロシティ)**と呼びます。
この時期に起こりやすいこと
PHVの前後は、手足が急に長くなります。そのため、これまでと同じ感覚で動いているつもりでも、身体のバランスが変わり、動きがぎこちなく見えることがあります。
あわせて、身体が硬く感じられたり、疲れやすくなったり、膝や腰に違和感が出たりするのも、この時期に起こりやすい変化です。
周りの子と比べない
時期もスピードも人によって違い、同じ年齢でも身体の変化は同じではありません。だからこそ、周りの子と比べるのではなく、その子自身のいまの様子を見ることが大切です。
いい練習ができているのに、伸びない時期がある
現場から
ジュニアの選手を見てきたなかで、私が何度も経験していることがあります。質の高い練習ができていて、トレーニングもしっかり積めていて、技術の練習も順調なのに、なぜかパフォーマンスが上がらない時期があるのです。
PHVの時期には、こうしたことが起こりやすいというのが、現場での実感です。
なぜ、パフォーマンスが上がらないのか
理由の1つとして、私は**「感覚」が変わってしまうこと**が大きいと考えています。
まず、手足が伸びると、身体とボールとの距離が変わります。すると、ラケットを合わせるタイミングも、ボールとの距離感も、これまでとは変わってきます。
さらに、身長が伸びると、重心の位置も変わります。今まで打っていたときの重心の感覚とは、違ってくるのです。
筋力などの物理的な強化は、しっかりできています。それでも、身体の感覚の部分が変わってしまうため、パフォーマンスが低下しやすくなります。これが、PHVの時期にパフォーマンスが落ちる要因の1つだと、現場では考えています。
研究では、どう言われているか
思春期に、一時的に動きの協調性やバランスが落ちる「ぎこちなさ(adolescent awkwardness)」があるという考え方は、以前からあります。ただ、研究を整理した論文では、結果にばらつきがあり、まだ十分には分かっていないとされています(Quatman-Yates ら、2012/Borato ら、2025)。
つまり、「必ずこうなる」と言える段階ではありません。一方で、成長の途中で感覚が変わることは、現場でよく見られる変化です。
知っておくだけで、受け止め方が変わる
大切なのは、これを知っておくことです。保護者も、コーチも、そして選手本人も、「いい練習やトレーニングができていても、パフォーマンスが上がらない時期がある」と理解しておくだけで、受け止め方は大きく変わります。
知らないままだと
知らないままだと、「こんなに練習しているのに、トレーニングもしているのに、どうしてパフォーマンスが上がらないのか、どうして落ちているのか」と、本人も周りも焦ってしまいます。そして、練習をさらに増やしたり、自分を責めたりしかねません。
「いまはPHVの時期かも」と思えると
反対に、「いまはPHVの時期かもしれない」と思えていれば、すぐに結果が出なくても気持ちを保ちやすくなります。モチベーションを維持するうえでも、大きな支えになります。
身長と体重を、記録しておく
こうした時期を見逃さないために、身長と体重を記録しておくことは、大切なコンディショニングの1つだと考えています。
月に1回など、決まった頻度で測っておけば、「いま、急に伸びている時期かもしれない」と気づきやすくなります。パフォーマンスが伸び悩んだときにも、記録があれば、練習の内容ではなく成長の時期が関係しているかもしれない、と落ち着いて考えられます。
ジュニアの選手を見るときには、必ず知っておきたいことです。
練習量は急に増やさず、休む日を先に決める
成長期は、身体の変化に練習量が重なります。大会や合宿で急に量が増えたときは、痛みや疲れの様子を、いつもより丁寧に見てあげてください。
「痛い」と言いにくい子もいます。走り方や構え、フォームの変化に、保護者やコーチが気づけることが大切です。
練習量が増えた週の見方
- 1
増える予定を、先に知っておく
大会・合宿・遠征が続く週は、あらかじめ把握しておく。
予定
- 2
動きの変化を見る
走り方、構え、フォームがいつもと違わないか。
動き
- 3
疲れと痛みを聞く
「どこか痛い?」より、「いつもと違うところはある?」と聞く。
声かけ
- 4
休む日を、先に決める
練習を休む日を、予定に入れておく。
休養

休む日は、練習より先に決める
メニューを決めるときも同じです。練習やトレーニングの量に合わせて休む日を決めようとすると、予定はいつの間にか埋まっていき、結局いつまでも休めません。
そこで、先に休む日をルーティンとして決めてしまい、そのうえで練習をどう組み立てるかを考えるほうが、組み立てとしてもうまくいきます。
大会などのイレギュラーはもちろんありますが、基本の型として、休む日をしっかり作っておくことをおすすめします。
長い目で、力を伸ばす
成長の段階によって、伸ばしやすい力は変わります。子どもの身体の発達に合わせて、長期的に力を育てていく考え方があり(Lloyd & Oliver、2012)、年齢や成長の様子に合わせて内容を選ぶことが大切だとされています。
筋力トレーニングについて
子どもの筋力トレーニングについては、スポーツ医学・小児医学・運動科学などの専門家が、考え方をまとめた声明があります(Lloyd ら、2014)。この声明は、複数の専門団体のレビューと承認を受けています。
トレーニングを始める前に、指導者の知識や進め方を確認するときの手がかりになります。
テニスだけに絞るべきか
早くから1つの競技だけに集中することについては、研究を整理した論文があります(Jayanthi ら、2013)。
この論文では、ほとんどの競技で、思春期の前から1つの競技だけに集中することが、トップレベルになるために必要だという根拠はないと述べられています。早くから絞ると、ケガの増加、精神的なストレス、早い時期の競技離れといったリスクがあるため、集中的な練習は、青年期の後半まで遅らせるのがよいとされています。
早くから1つの競技に絞ること/いろいろな動きを経験すること
早くから1つに絞ると
- ケガが増えるリスク
- 精神的なストレス
- 早い時期の競技離れ
- トップレベルになるために必要という根拠はない
いろいろな動きを経験すると
- 走る・跳ぶ・投げるなどの土台づくりにつながる
- 集中的な練習は、青年期の後半まで遅らせるのがよいとされる

現場から
トップ選手でも、オフシーズンや、試合後の長いリカバリーのあいだに、テニス以外のスポーツに取り組むことがあります。テニスではやらない動きをすることで、身体に新しい刺激が入って活性化されますし、気持ちの面でもリフレッシュできるからです。
これは年代やレベルに関係なく言えることです。試合が詰まっていないオフシーズンや、試合後のリカバリーウィークには、テニスではやらない動きを入れてあげることで、身体のバランスを整えられると私は考えています。
保護者にできること
1つ目は、痛みや疲れを、本人が話しやすい雰囲気をつくっておくことです。
2つ目は、練習を休む日を先に決めておくことです。スケジュールの調整は大変ですし、試合のあとに練習をしたり、午前に練習して1日をぎっしり練習で詰めたりしがちです。ただ、休む日、つまり疲労の度合いをコントロールする日をつくることも、同じくらい大切です。
やればやっただけパフォーマンスが上がるわけではありません。練習と休みのバランスを、保護者の目線で見てあげてください。
保護者にできること
- 痛みや疲れを、話しやすい雰囲気をつくる
- 練習を休む日を、先に予定へ入れておく
- 疲労をコントロールする日を、意識してつくる
- パフォーマンスが伸びない時期があることを、本人と共有しておく

痛みが続くときは、練習を続ける前に、医療機関に相談してください。この記事は一般的な情報です。診断や治療の代わりにはなりません。
用語メモ
- PHV(ピーク・ハイト・ベロシティ)
- 身長が伸びる速さが、一番大きくなる時期のことです。
- 思春期のぎこちなさ(adolescent awkwardness)
- 成長期に、一時的に動きの協調性やバランスが落ちるという考え方です。研究結果にはばらつきがあり、まだ十分には分かっていません。
- 早期専門化
- 子どものうちから、1つの競技だけに集中して取り組み、ほかの競技をやめることです。
- ポジション・ステートメント
- 専門家の団体が、ある課題についての考え方をまとめた公式の声明です。
よくある質問
練習もトレーニングもしているのに、パフォーマンスが上がらないのはなぜですか?
身長が急に伸びる時期は、手足の長さや重心の位置が変わり、ボールとの距離感やラケットを合わせるタイミングがずれやすくなります。筋力などは伸びていても、感覚が変わるため、いい練習をしていても、すぐには結果に出にくいことがあります。現場では何度も見られることです。もちろん、痛みが続くときや、疲れが抜けないときは、別の理由も考えて医療機関に相談してください。
PHVとは、何ですか?
身長が伸びる速さが、一番大きくなる時期のことです。時期や速さには個人差があります。
子どもが筋力トレーニングをしても大丈夫ですか?
専門団体がまとめた声明があり、始める前に指導者の知識や進め方を確認することが大切だとされています。詳しくは本文をご覧ください。
テニスだけに絞るのは、早いほうがよいですか?
研究を整理した論文では、思春期の前から1つの競技だけに集中する必要があるという根拠はなく、ケガやストレス、早い時期の競技離れといったリスクがあると述べられています。
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参考文献
- Quatman-Yates CC, et al. A systematic review of sensorimotor function during adolescence: a developmental stage of increased motor awkwardness? British Journal of Sports Medicine. 2012;46(9):649-655.
- Borato LA, et al. What do we know (and not know) about adolescent awkwardness in youth sports? A narrative review. International Journal of Sports Science and Coaching. 2025.
- Lloyd RS, et al. Position statement on youth resistance training: the 2014 International Consensus. British Journal of Sports Medicine. 2014;48(7):498-505.
- Jayanthi N, et al. Sports specialization in young athletes: evidence-based recommendations. Sports Health. 2013;5(3):251-257.
- Lloyd RS, Oliver JL. The Youth Physical Development Model: A new approach to long-term athletic development. Strength and Conditioning Journal. 2012;34(3):61-72.
