テニスのフィジカルとは?ジュニアが伸ばしたい5つの要素
筋力・スピード・持久力・柔軟性・協調性を、具体的に
記事は一般的な情報です。診断や治療の代わりではありません。痛みがあるときは、医療機関を受診してください。
この記事のポイント
- テニスのフィジカルを構成する5つの要素
- スピードは「速く動く」だけでなく、力と合わせた「パワー」で考える
- ジュニアは、筋力に加えて「身体の連動」でパワーを引き出す
- 柔軟性とコーディネーションが不足しやすい背景
- コーディネーションの7つの能力と、テニスでの例
「フィジカルを鍛えよう」と言われても、何を、どう鍛えるのかは、意外とあいまいなままです。この記事では、テニスのフィジカルを5つの要素に分けて、それぞれ具体的に整理します。
テニスのフィジカルを支える5つの要素

5つの要素を、ひとことで
| 要素 | ひとことで | テニスの場面 |
|---|---|---|
| 筋力 | 力を出す能力 | 踏ん張る、体勢を支える |
| スピード | 速く動く能力 | 一歩目、スイング |
| 持久力 | 動き続ける能力 | 長いラリー、試合の後半 |
| 柔軟性 | 関節を大きく動かせる能力 | 大きく振る、深く踏み込む |
| 協調性 | 身体をうまく使う能力 | 全身をつなげて打つ |
テニスの試合では、これらが組み合わさって求められます。ただし、テニスに必要な体力の具体的な中身は、まだ十分に解明されていません。テニスに合わせたトレーニングの必要性が指摘されています(Kovacs、2006)。
筋力|力を出す能力
筋力は、身体を支え、動かし、止めるための土台です。
- 走って止まるときに、踏ん張る。
- ラケットを振るときに、身体がぶれないように支える。
- 打ったあとの衝撃を、受け止める。
ジュニアの場合、最初から重い負荷を扱う必要はありません。まずは、自分の体重を、正しい姿勢で支えて動かす力が土台になります。子どもの筋力トレーニングについては、専門家の団体が考え方をまとめた声明があります(Lloyd ら、2014)。
スピード|「速く動く」だけではない
スピードと聞くと、「足が速い」ことを思い浮かべるかもしれません。テニスで求められるスピードには、いくつかの種類があります。
- 反応の速さ:相手の打球を見て、動き出すまでの速さ。
- 動き出しの速さ:一歩目で、身体を加速させる速さ。
- 動作の速さ:ラケットを振る速さ。
ここで大切なのは、テニスのスピードは、何も持たずに速く動く力だけではないという点です。
テニスでは、自分の体重を加速させ、ラケットを振り、地面から力を受けながら動きます。つまり、負荷がかかった状態での速さが求められます。この「力と速さの組み合わせ」を、パワーと呼びます。
力 × 速さ = パワー

筋肉が出せる最大のパワーは、力と速さの関係によって決まる、と整理されています(Cormie ら、2011)。さらに、パワーには、筋の量や腱の特性だけでなく、神経が筋をうまく働かせる力など、いくつもの要因が関わります。
- 軽すぎる負荷:速く動かせるが、出せる力は小さい。
- 重すぎる負荷:大きな力は出るが、動きは遅くなる。
- 中間あたり:力と速さのバランスがよく、パワーが大きくなりやすい。
ジュニアは「連動」でパワーを引き出す
パワーを伸ばすには、筋力も欠かせません。ただ、ジュニア期に筋力を十分に鍛え込むのは、簡単ではありません。そこで大切になるのが、身体の連動性です。
1つの関節だけで動くよりも、2つ、3つの関節が連動して動くほうが、それぞれの力が重なり合って、大きなパワーが出ます。素早く、力強く動けるのも、連動がうまくいっているときです。
そのため、まず見るのは「どこで力をロスしているか」です。動きを観察し、力が途切れている場所を分析します。
100%の力が出ていない状態で、その100%を伸ばそうとするのは、順番が逆だと考えています。まず、出し切れていない力を引き出し、そのうえで筋力を伸ばしていきます。
持久力|動き続ける能力
テニスは、数秒のラリーと、短い休みを繰り返すスポーツです。この「動く」と「止まる」を繰り返す性質を、間欠的と呼びます。
持久力には、次のような場面があります。
- 長いラリーを、動きが乱れずに続ける。
- ポイントとポイントの間に、素早く回復する。
- 試合の後半でも、足が動き続ける。
ただ長く走る力だけでなく、「短く速く動いて、素早く回復する」力も大切です。
柔軟性|関節を大きく動かせる能力
柔軟性は、関節を動かせる範囲と、筋肉の伸びやすさです。ただ「身体が柔らかい」ことだけではなく、必要な範囲を、動かして使えることが大切です。
テニスで特に見たい部位は、次のとおりです。
- 肩と胸まわり:大きく振り上げる、胸を開く。
- 股関節:踏み込む、身体をひねる。
- 太ももの裏・足首:走る、止まる、着地する。
現場で感じているのは、ここ数年、ジュニアの柔軟性が落ちていることです。姿勢が崩れやすい生活の影響で、解剖学的に理想的な姿勢から大きく外れている選手が目立ちます。たとえば、肩の動く範囲が狭い選手には、胸の前にある小胸筋が硬くなっているケースがよくあります。
小胸筋の長さと、肩甲骨の動きを調べた研究があります。肩に痛みのない50名を、小胸筋が長い群と短い群に分けて、腕を上げたときの肩甲骨の動きを比べました。短い群は、腕を高く上げても、肩甲骨が前に傾いたままでした(Borstad ら、2005)。小胸筋の状態が、肩の動きに影響しうることを示す結果です。ただし、対象は肩の痛みがない健康なボランティアで、ジュニアのテニス選手に限った結果ではありません。
また、テニスのトレーニングについて整理した論文では、筋力と柔軟性のトレーニングは、パフォーマンスとケガの予防に有益だと考えられています。一方で、具体的な進め方の指針は、まだ足りないとも指摘されています(Kovacs、2006)。
協調性|身体をうまく使う能力(コーディネーション)
協調性は、状況に合わせて、身体を思いどおりに動かす能力です。コーディネーションとも呼ばれます。「筋力があるのに、動きがぎこちない」というときは、この部分が関わることがあります。
現場では、ジュニアのコーディネーションが低下していると感じます。背景には、時代の変化があると考えています。学校体育で行う内容が減り、公園で遊べることも限られてきて、いろいろな動きを経験する機会が少なくなっているためです。
コーディネーションは、次の7つの能力に分けて考えられています。
コーディネーションの7つの能力と、テニスでの例
定位
動くものと自分の位置関係を把握する
例:ボールの落ちる場所に入る
識別
力加減や用具の操作を、細かく調整する
例:ドロップショットやボレーの力加減
反応
合図に素早く反応して動く
例:リターンやボレーの一歩目
変換
状況の変化に合わせて、動きを切り替える
例:攻めから守りへの切り替え
連結
身体全体を、無駄なくスムーズに動かす
例:サーブで足から腕へ力をつなぐ
リズム
動くタイミングやテンポをつかむ
例:スプリットステップのタイミング
バランス
姿勢を保ち、崩れても立て直す
例:体勢を崩されたあとの1球

7つに分けて考えると、「どの能力が苦手なのか」が見えやすくなり、練習を選びやすくなります。
1つのポイントで、5つはどう使われるか
1つのポイントの中で、5つの要素はどう使われるか
- 1
相手の打球を見る
反応定位
- 2
一歩目で動き出す
スピードパワー
- 3
止まって、踏ん張る
筋力バランス柔軟性
- 4
全身を使って打つ
連結パワー識別
- 5
すぐ戻って、次に備える
持久力変換リズム

1回のラリーの中で、5つの要素はすべて使われます。どれか1つが極端に弱いと、そこが全体の足を引っ張ることがあります。
自分の状態を知るには
テニス選手の体力を調べる方法として、実験室で行う検査と、コートや体育館で行う検査があります。テニスのように、動きと休みを繰り返す競技には、コートや体育館などで行う検査のほうが向いているとされています。また、1年の中で定期的に測ると、その選手の特徴を捉え、練習の内容を考える手がかりになります(Fernandez-Fernandez ら、2014)。
まとめ
- テニスのフィジカルは、筋力・スピード・持久力・柔軟性・協調性の5つで考える。
- スピードは、速く動く力だけでなく、負荷がかかった状態での速さ(パワー)で考える。
- ジュニアは、筋力に加えて、関節の連動で力のロスを減らすことが大切。
- 近年は、柔軟性とコーディネーションが不足しやすい。
- 協調性は、7つの能力に分けると、苦手な部分が見えやすくなる。
この記事は一般的な情報です。診断や治療の代わりにはなりません。痛みが続くときは、医療機関に相談してください。
用語メモ
- パワー
- 力と速さをかけ合わせたものです。「重いものを、速く動かす」力のことです。
- コーディネーション
- 状況に合わせて、身体を思いどおりに、うまく動かす能力です。協調性とも呼ばれます。
- 連動(運動連鎖)
- 複数の関節や筋肉が、順番とタイミングよく働いて、力をつないでいくことです。
- 小胸筋(しょうきょうきん)
- 胸の前側にあり、肩甲骨を前や下に引く筋肉です。硬くなると、肩の動きに影響することがあります。
- 間欠的(かんけつてき)
- 「動く」と「止まる」を繰り返す性質のことです。テニスは、ラリーと休みが交互に続きます。
よくある質問
テニスのフィジカルとは、何を指しますか?
テニスのフィジカルは、筋力・スピード・持久力・柔軟性・協調性(コーディネーション)の5つの要素で考えると整理しやすくなります。どれか1つだけでなく、バランスよく伸ばすことが大切です。
スピードとパワーは、同じ意味ですか?
同じではありません。「速く動く」ことに加えて、力と合わせた「パワー」で考えると、テニスの動きに近くなります。
ジュニアは、まず何から伸ばせばよいですか?
まずは、今の身体の状態を知ることが出発点です。柔軟性や身体の使い方に不足がある場合は、そこを整えることで、筋力や動きの力が出やすくなると考えています。
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参考文献
- Kovacs MS. Applied physiology of tennis performance. British Journal of Sports Medicine. 2006;40(5).
- Cormie P, McGuigan MR, Newton RU. Developing maximal neuromuscular power: Part 1 – Biological basis of maximal power production. Sports Medicine. 2011;41(1).
- Fernandez-Fernandez J, Ulbricht A, Ferrauti A. Fitness testing of tennis players: How valuable is it? British Journal of Sports Medicine. 2014;48(Suppl 1):i22-i31.
- Lloyd RS, et al. Position statement on youth resistance training: the 2014 International Consensus. British Journal of Sports Medicine. 2014;48(7):498-505.
- Borstad JD, Ludewig PM. The effect of long versus short pectoralis minor resting length on scapular kinematics in healthy individuals. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2005.
