柱記事ストレッチ・ウォームアップ

練習前後のウォームアップとクールダウン

基本の流れと、研究で分かっていること

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塙 翔太

この記事を書いた人

塙 翔太

JSPO認定アスレティックトレーナー(AT歴20年)

テニスでの経験・実績を見る

20歳でトレーナーの道に入り、アメリカ・アリゾナのトレーニング施設EXOSのメンターシップで学びました。サッカー、テニス、バスケットボール、ラクロス、レスリング、チアダンス、マラソン・トレイルランニングなど、様々な競技・年代の選手を、10,000人以上指導してきました。テニスでは、クラブの専属フィジカルトレーナーとして15年間、ジュニアから大人まで身体づくりを支えています。

テニスでの経験・実績

  • テニスクラブの専属フィジカルトレーナー・ATとして15年間活動
  • 2026年4月、ジュニアテニス専門のフィジカルアカデミー「TPA」を西葛西で開校(2027年1月、世田谷にも開校予定)
  • 関東の提携クラブと連携し、ジュニア選手の測定・自宅メニュー・習慣化までを継続して担当
  • アメリカ・フロリダのテニスアカデミーで、練習とトレーニングの現場を視察し、育成の考え方を学ぶ
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記事は一般的な情報です。診断や治療の代わりではありません。痛みがあるときは、医療機関を受診してください。

この記事のポイント

  1. ウォームアップでケガが減るかを調べた研究
  2. 30〜40分かけて、段階的に強度を上げる
  3. 心拍数を上げ、最後は爆発的な動きで終える
  4. 静的ストレッチから動的ストレッチへ、つなげる
  5. 寒い時期と、遠征のときの注意

練習の前に、すぐラケットを握って打ち始める選手は少なくありません。

ウォームアップは、身体を動かす状態に整えるための時間です。この記事では、基本の流れと、ウォームアップとケガの関係についての研究、そして現場でのやり方をお伝えします。

ウォームアップの目的

ウォームアップには、次のような目的があります。

  • 体温を上げ、身体を動かしやすくする。
  • 関節の動く範囲を広げる。
  • テニスで使う動きに、身体を慣らす。

ウォームアップで、ケガは減るのか

ふだんのウォームアップを調べた研究

ウォームアップがケガを減らすのかを、くじ引き方式の比較試験(RCT)を集めて整理した論文があります(Fradkin ら、2006)。

対象になった5件の研究の結果

ケガのリスクが下がった(3件)減ったとは言えなかった(2件)

ウォームアップを行った群でケガのリスクが下がったのは、5件中3件でした。

5件のうち3件で、ケガのリスクが下がったと報告されました。残りの2件では、減ったとは言えませんでした。

結論は、「ふだんのウォームアップを勧めるにも、やめるにも、十分な根拠はない」です。ただし、証拠の重みは、ケガのリスクを下げる方向にあるとも述べられています。これは「効果がない」という意味ではなく、「研究の数がまだ足りない」という意味です。

中身のあるウォームアップなら、はっきり減った研究もある

筋力やバランス、着地などの練習を組み込んだ「包括的なウォームアップ」を調べた研究では、ケガが減ったと報告されています。

13〜17歳の女子サッカー選手1,892人を、1シーズン追った研究(Soligard ら、2008)では、このウォームアップを行ったチームで、全体のケガが約32%、使いすぎのケガが約53%少なくなりました。

また、6件の比較試験をまとめた論文(Thorborg ら、2017)でも、筋力やバランスを含む「FIFA 11+」というウォームアップで、ケガが約39%少ないという結果でした。一方で、内容が簡単な「FIFA 11」では、減ったとは言えませんでした。

どちらもサッカーの研究で、テニスに限った結果ではありません。それでも、ただ動くだけでなく、中身のあるウォームアップがケガの減少につながる可能性を示しています。

現場から

研究では「減るとは言い切れない」という慎重な書き方になりますが、現場で選手を見ている私は、ウォームアップでケガは減ると考えています。

理由のひとつは、気温です。寒い時期は、筋肉が固まって伸び縮みしにくくなります。そのため、肉離れなどの筋肉系のケガが増えやすくなります。

もうひとつは、遠征です。寒い時期の遠征は、移動のあいだ座りっぱなしで、身体が固まった状態のまま会場に着きます。そのまま試合に入れば、ケガのリスクは上がります。遠征のときほど、いつもより慎重なウォームアップが必要だと考えています。

30〜40分かけて、段階的に上げていく

研究ではウォームアップの時間まで決まっていませんが、現場では30〜40分かけて、しっかり行うことをすすめています。短時間で済ませず、少しずつレベルを上げていくのがポイントです。

ウォームアップは、4つの方向で段階を上げる

  1. 1

    単関節から、多関節へ

    1つの関節を動かす動きから、全身をつなげた動きへ。

    関節

  2. 2

    静的から、動的へ

    ゆっくり伸ばす動きから、動きの中で可動性を出す動きへ。

    ストレッチ

  3. 3

    安定から、不安定へ

    安定した場所での動きから、バランスを崩しやすい動きへ。

    バランス

  4. 4

    一方向から、多方向へ

    前後の動きから、横・斜め・切り返しを含む動きへ。

    方向

どれも、やさしいほうから始めて、少しずつ難しいほうへ進めます。

この考え方は、体温を上げて少しずつ強度を高める「RAMP(ランプ)」という方法とも重なります(Jeffreys、2006)。

「筋肉を温める」だけでは足りません

ウォームアップというと、「筋肉を温めること」と考えがちです。しかし私は、それだけでは足りず、心拍数もしっかり上げる必要があると考えています。

目安は、最大心拍数の7〜8割です。ウォームアップの後半で、そこまで上げておくイメージです。

ここでひとつ、正直にお伝えします。この「7〜8割」という数字を、ウォームアップの目安として確かめた研究は、私は確認できていません。そのため、現場での経験にもとづく目安です。実際には、数字よりも「息が弾み、うっすら汗をかく」という身体の様子を見ながら調整します。

最後は、爆発的な動きで終える

テニスは、長く走り続ける競技ではありません。短いダッシュ、素早い切り返し、ラケットを強く振る動きなど、短い時間に爆発的な力を出すことのくり返しです。

エネルギーの面でいえば、短い距離のダッシュと同じように、すばやく力を出す仕組みを何度も使います。そのため、ウォームアップの最後も、ゆっくりした動きで終わらず、短いスプリントや、爆発的な動きを入れて終えるのがよいと考えています。

練習や試合の最初の1球から、全力で動ける状態をつくるためです。

ウォームアップの流れ(30〜40分の例)

  1. 1

    軽く動いて、体温を上げる

    軽いジョグ、ステップ、スキップなど。

    全身体温

  2. 2

    静的ストレッチから、動的ストレッチへ

    股関節・肩・体幹を、ゆっくり伸ばしてから、動かしながら広げる。

    股関節肩体幹

  3. 3

    心拍数を上げる

    多方向のステップや切り返しで、息が弾むところまで上げる。

    心拍数多方向

  4. 4

    爆発的な動きで終える

    短いダッシュ、ジャンプ、素振りなど。

    スプリントパワー

時間や内容は、選手の年齢や、その日の練習内容によって変えます。

静的ストレッチは、練習の前にやってはいけない?

「練習前に、ゆっくり伸ばすストレッチはよくない」と言われることがあります。ですが、私はやってはいけないというより、順番の問題だと考えています。

静的ストレッチと動的ストレッチは、目的が違います。静的ストレッチは、筋肉を伸ばして、可動域を確保するためのものです。動的ストレッチは、動きの中で可動性を確保するためのものです。

だから、静的ストレッチをして終わるのではなく、ゆっくりと時間をかけて、静的から動的へ移っていくことが大切です。静的ストレッチのあとに、動的ストレッチで終わってあげるイメージです。

研究でも、同じ方向の結論が出ています(Behm ら、2016)。静的ストレッチを長く(1つの筋肉で60秒以上)行うと、直後のパフォーマンスは下がりやすくなります。しかし、そのあとに動きを伴うウォームアップを加えれば、影響ははっきりしなくなります。そして、ストレッチをウォームアップの一部として、動きのある内容を後ろに組み合わせることで、筋肉のケガを減らし、関節の動く範囲を広げられる可能性があるとされています。

動的ストレッチ 静的ストレッチ
やり方 身体を動かしながら、関節や筋肉の動く範囲を広げる 反動をつけず、ゆっくり伸ばして止める
目的 動きの中で、可動性を確保する 筋肉を伸ばして、可動域を確保する
向いている場面 ウォームアップの後半、練習の前 ウォームアップの前半(短め)、練習のあと
例 脚を振る、股関節を回す、腕を大きく回す 太ももやお尻、肩を、ゆっくり伸ばす

寒い時期と、遠征のときの注意

寒い日・移動のあとのウォームアップ

  • 移動のあとは、いつもより時間をかけて始める
  • 軽く動くところから、段階的に上げていく
  • 寒い日は、上着を着たまま始め、身体が温まってから脱ぐ
  • 動的ストレッチのあと、テニスに近い動きで終える

クールダウンの考え方

練習や試合のあとは、すぐに止まらず、軽く動いて呼吸を整えます。そのあと、使った部分をゆっくり伸ばす静的ストレッチを行うと、練習後の切り替えの時間になります。

クールダウンの流れ

  1. 1

    軽く歩く、またはゆっくり動く

    呼吸を整える。

    呼吸

  2. 2

    ゆっくり伸ばす

    太もも・お尻・肩などを、反動をつけずに伸ばす。

    静的ストレッチ

  3. 3

    水分をとる

    練習後は、早めに水分をとる。

    水分

注意したいこと

痛みがあるのに、無理に伸ばしたり、動かし続けたりしないでください。痛みが続くときは、練習を続ける前に、医療機関に相談してください。この記事は一般的な情報です。診断や治療の代わりにはなりません。

用語メモ

単関節・多関節
1つの関節だけを動かす動きが単関節、複数の関節をつなげて動かす動きが多関節です。
動的ストレッチ
身体を動かしながら、関節や筋肉の動く範囲を広げるストレッチです。
静的ストレッチ
反動をつけずに、ゆっくり筋肉を伸ばして止めるストレッチです。
システマティックレビュー
あるテーマについて、条件を決めて研究を集め、まとめて評価する方法です。

よくある質問

ウォームアップは、ケガを防ぎますか?

確実に防げるとは言い切れません。ただ、筋力やバランス、着地の練習を含む「中身のあるウォームアップ」でケガが減ったと報告した研究があります(サッカーの研究)。ふだんのウォームアップを整理した論文でも、リスクを下げる方向の証拠が重いとされています。

ウォームアップは、どのくらいの時間をかけますか?

選手の年齢や、その日の練習内容によって変わりますが、現場では30〜40分かけて、段階的に強度を上げていく方法をすすめています。寒い時期や、移動のあとは、いつもより丁寧に行います。

静的ストレッチは、練習の前にやってはいけませんか?

やってはいけないわけではありません。ただ、長く伸ばしすぎると直後のパワーが下がりやすいため、短めにして、そのあと動的ストレッチやテニスに近い動きにつなげるのがよいと考えられます。

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参考文献

  1. Soligard T, et al. Comprehensive warm-up programme to prevent injuries in young female footballers: cluster randomised controlled trial. BMJ. 2008;337:a2469.
  2. Thorborg K, et al. Effect of specific exercise-based football injury prevention programmes on the overall injury rate in football: a systematic review and meta-analysis of the FIFA 11 and 11+ programmes. British Journal of Sports Medicine. 2017;51(7):562-571.
  3. Behm DG, et al. Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism. 2016;41(1):1-11.
  4. Jeffreys I. Warm-up revisited: the ramp method of optimizing performance preparation. Professional Strength & Conditioning. 2006;6:12-18.
  5. Fradkin AJ, Gabbe BJ, Cameron PA. Does warming up prevent injury in sport? The evidence from randomised controlled trials? Journal of Science and Medicine in Sport. 2006;9(3):214-220.
塙 翔太

この記事を書いた人

塙 翔太

JSPO認定アスレティックトレーナー(AT歴20年)

20歳でトレーナーの道に入り、アメリカ・アリゾナのトレーニング施設EXOSのメンターシップで学びました。サッカー、テニス、バスケットボール、ラクロス、レスリング、チアダンス、マラソン・トレイルランニングなど、様々な競技・年代の選手を、10,000人以上指導してきました。テニスでは、クラブの専属フィジカルトレーナーとして15年間、ジュニアから大人まで身体づくりを支えています。

テニスでの経験・実績

  • テニスクラブの専属フィジカルトレーナー・ATとして15年間活動
  • 2026年4月、ジュニアテニス専門のフィジカルアカデミー「TPA」を西葛西で開校(2027年1月、世田谷にも開校予定)
  • 関東の提携クラブと連携し、ジュニア選手の測定・自宅メニュー・習慣化までを継続して担当
  • アメリカ・フロリダのテニスアカデミーで、練習とトレーニングの現場を視察し、育成の考え方を学ぶ
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